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Qualita
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2018.6.7

前田木藝工房三代目前田純一氏のインタビュー映像 完全版

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Qualita Artisansのパートナーである長野県松本市の前田木藝工房三代目前田純一氏へのインタビュー映像の完全版が公開となりました。

前編でお話いただいた作品に対する思いや道具へのこだわり、それに加え先生が考える位牌、キリスト教の方用の厨子(祭壇)を作られたきっかけ、それらを通し人柄も感じていただける内容です。

ぜひ一度ご覧下さい。

 

今後全国のQualita Artisansのパートナーの方々のインタビュー映像を随時公開してまいりますので、

楽しみにしていただければ幸いです。

 

 

 

ここからはインタビュー動画には入りきらなかった内容も含めお伺いした内容をお伝えします。

 

今回は前田木藝工房三代目の前田純一先生に作品を作るうえでのこだわりや理由、あまり見かけないキリスト教の方向けの祭壇を作られたきっかけから、位牌や仏壇といった宗教用具に対する考え方などを伺いました。

 

Qualita:

先生ご自身の自己紹介よろしくお願いします。

 

前田氏:

前田純一と申します。江戸指物というのがあるんのですが、私はその三代目をやっております。一応工芸家ということですが木の仕事の中の指物というのをやっております。

 

Qualita:

先生の作品は錆びた金属を使うものがありますがこれにはどのような意図があるのでしょうか。

 

前田氏:

僕は作品に金属の場合、特に錆びた味を使うんですが、これがどうして錆たのがいいんですか?って聞かれることがあるんですが、なにか物っていうのは出来立ては割とピシッとできていて、ある場合にはとげとげしい、それはそれでいいにしても、やはり時間が経って例えば道端の石づくりのお地蔵さんが雨に打たれて丸くなるような、そんな感じが錆びというものが物体に及ぼす影響っていうんでしょうかね。

一言で言えば丸くなるっていいましょうか、角が取れるといいましょうか、そんなことが僕は好きなもんですから、作品にもやはりそういったものを使うようにしています。

 

Qualita:

錆びはどのようにして作られるのでしょうか。

 

前田氏:

錆というものは、まぁ現代では薬品例えば塩酸とか硫酸、あるいはアンモニアとかそんなものを使ってやるんですが、僕の場合はやはり塩水を付けたり、それからアンモニアを使ったり、それからある場合には時間を掛けて海岸にほっておいて、そんなことで錆のいい味を出るようにしています。

 

Qualita:

製作する際のこだわりの道具はありますか。

 

前田氏:

指物師の道具というものは、僕に限らず基本的に自分たちで作るんですが、一つにはあんまり売ってないということもありますが、基本的に道具ありきじゃなくてこういうものを作りたいんだっていうそういったものがあるわけですね。

その形を出すのに特に指物の場合は、かんなを工夫するわけです。これが一般化して例えば建具用のかんなとかそういったものは多少売られるようになりましたけども特に現代は指物師用のかんな、それは売ってませんし、もし売ってたとしても自分の思い描いた形はこれはできないだろうと、どうしても作るざるをえない。

それからもう一つかんなというものは、刃物がものをいいます。なぜかというと、いい指物仕事は漆を塗ってから組み立てると、そういったことがあるんですが、漆の硬さっていうのは金と同じというふうに言われているんですね。

それで金刃が一番いいっていうふうにいわれたのはそんなことじゃないかと思うのですが、そういったことで金を削らなきゃならないってことも往々にしてあるので。

それから漆も相当硬いものなんです、ですから昔ながらの日本刀のような鋼ではちょっと手間がかかりすぎちゃうということで、自分で刃から作ってきたと、そういった経緯があります。

当然僕たちの作る刃物を使う道具というのは、手工具と言われるもので、いわゆる電動工具や機械工具ではないわけですね。

基本的に手工具というモーターのついてない、昔ながらの道具なんですよね。でこれは非常に愛着のあるものなんです。

機械は非常にメンテをこまめにするにしても、いつかは寿命がきて買い替えなければならないですが、手工具はやはり基本的に多分一生使い続けるものが80パーセントくらいあると、そういったことで僕に限らず昔からの職人さん、いまの木工家の職人さんも自分で作って、壊れたら直し、あるいは具合の悪いところは、例えば木が割れたら作り直すと、そんなことで使い続けると、そういった意味で買った道具とは全く違う存在なんですね。

 

Qualita:

前田先生が考えるお位牌というのは、どういったものでしょうか。

 

前田氏:

現代は家族形態が非常に変化してると、ある報道では崩壊したなんかも、そんなこともいわれてるようなんですが、確かに核家族ということが言われてから随分時間が経ちますし、いろんな意味で家庭の生活スタイルが変わっていると思うんですね。

それでお位牌っていうのは、大抵昔は生まれてからもうすでに目の前にあったと、そういった存在で、僕はお位牌の役割はなんだろうかって考えると、例えば大事なもので日々手を合わせたり、感謝の思いを持ったりしてるわけなんですが、ある時期に、そういえばおじいちゃんって何月に亡くなったんだっけ?とあるいはこの人どういう関係の人なんですか?とそういったことが出てくるんじゃないかと思ったことがあるんです。

ですから、そういう意味ではある意味では過去帳だと覚書といったらいいんでしょうか、多分昔はそんなに形が定着してないころは、うちのおじいちゃんはいつ亡くなったんだと、何月何日でこうだったとそういったメモ書きみたいなものが、それは自分の為でもあり、これからその家を引き継ぐような子孫の為でもあったんだと思うんですね。

ところが一番初めに申し上げたように、そういった家族形態がいまだいぶ崩れてきたと、そういったことでちょっとお位牌ってものも考え直さなきゃいけないんじゃないかなと、そういったことがあります。

それではお位牌がこういった形であるべきと、そういったことはどうして僕の中で生まれるのかというとやはり歴史の中で、僕が一番好きと言いましょうか、参考にしている板碑というものがあるんです。

恐らく鎌倉時代くらいに作られたものだと思うんですが、野外に石で作られた薄い板のような形態しており、それで板碑というんですね。

僕もものづくりとして、いろんなものを例えば石碑、お墓の墓石の形、あるいは五輪塔のようなもの、随分研究するんですが、ある時に板碑を見たときにこれじゃないかな?と、僕の好きなものは作りたいものはそういったことがありまして、それでその板碑ってのはなんだったかというと供養塔だったと、供養塔ってことですからある程度何かのお仕事をされた方とか、そういった方だと思うんですが、やはり家庭にとってのお位牌というのは、先祖に感謝して、それをご供養すると、そういった意味合いが強いでしょうからそういった役割において、非常にその形に伝統的な品格といいましょうか、素晴らしい形じゃなきゃいけないんじゃないかなというところが僕の根底にありましてそれで形を考えてきたということが一つあります。

ですから、やはりそれはきちっと伝統を踏まえて、新しい形を考えていきたいというところがありまして、割とクラシックな形に基づいて作るんですが、また対極的に、例えば今であれば僕も犬が好きなんですが、犬に限らずペットのお位牌があってもいいんじゃないかと、あるいはとても大事にしている友人のご供養をするんだとそういった意味であってもいいんじゃないかと、そんなことから最近はクオリタさんで扱ってただいている楕円形のお位牌、こんなものも作るようになっています。

 

Qualita:

キリスト教の厨子(祭壇)を作られたきっかけはなんでしょうか。

 

前田氏:

キリスト教のお仏壇というかお厨子を作らせていただいたのは、かれこれ20数年前になりますけども、僕のこの家を建てた時に手伝ってくれた若者のお母さまが、非常に熱心なキリスト教の信者だったわけなんですが、その方がお父さんのお仏壇が欲しいんだと、お位牌というものは無いんですが、昔から大事にしているマリア様をぜひ僕のお仏壇に飾りたいと、まぁお仏壇とは言いません、ただお厨子という言い方はなさっていたような気がします。

特に最近になって2、3これならば私の家にも置きたいわっていうものをお買い求めいただいた方がありまして、そういったことからやはり、僕が思うのはまぁ宗教が云々は別にしても、やはり祈る気持ち、あるいはご先祖様なり、あるいは何か大切に思っている人を身近において手を合したいとゆう気持ちは仮に何教であっても同じなんじゃないかなぁとそんな思いを新たにした思いがあります。

 

Qualita:

円錐の厨子に込められた思いをお話いただけますか。

 

前田氏:

まず仏壇を含めて厨子って何だろうと、僕は箱というものと同じように何かの入れ物だと思うんですね、入れ物といっても日用雑貨を入れる箱ではなくて非常にその家にとってその人にとって、大事なものを入れると、例えば一番身近な親御さんであったり、あるいはとても尊敬している先生であったり、あるいはそういった実態がなくても考え方であったり、そういったものをしまう箱をお厨子というわけですが、つまり魂あるいは生き方、それを入れるものじゃないかと思うんです、ですからそれにそぐわうような素晴らしい入れ物いってみればお家が必要だと思うんですね。

それが転じてお厨子がお仏壇になってると思うんですが、基本的にお家ですから建築なんだということで、今まで代々作ってきたものは、全部木で作ってきましたが、建築を見るとやはり木の屋根っていうのはあることはありますが少ない、現代では特に少なくなってます。それで金属で作った場合には、緑青吹きのものが神社仏閣は特に多いですね。

そういったことから、なんで銅板の緑青なんだということが基本的にありまして、やはり銅が錆びたものなんだと、で錆びるということは土にかえるということなんで僕の考え方としては、木と同じように土にかえってくれると、結局地球にとってなんの負担にもならない、そういった素材なり、仕上げ方をしたいなぁということが基本的にありました。

それ以前にやはり緑青の色って綺麗だな、美しいなとそういったことが当然あったわけなんですが、そういったことで初めて作ったのが、2000年の銀座の和光での個展だったわけなんですね。

 

Qualita:

今回の円錐の厨子の製作で苦労した点はなんでしょうか。

 

前田氏:

2000年銀座の和光での個展に出した作品から、大分日にちが経ちまして、18年も経ちましたから現代のセンスといいましょうか、そういったことも変わっているわけなんですね。

そういったことも踏まえて、やはり細部のデザインをちょっとリニューアルしたくなったと、そういったことがありまして今回新たに作りました。

基本的に前の形を踏襲していて非常に難しいのは、四角い箱の上に円錐形の屋根を乗せるということが実際の建築にはあるかどうかわかりませんが、やってみるとバランスが非常に難しい、斜めから見ると、四角の場合は、対角線で見えてきます。

ところが円錐の場合は、斜めにしても全部同じ寸法ということで、非常にバランスに苦労しました。

試作を随分しまして、どうやらこれでいいんじゃないかというものが出来たものですから、これでクオリタさんにお願いできるなと、そんなことで一安心したそんなところです。

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